医療と病院の裏側

病院の待ち時間が長いのはなぜ?と思ったら読んでほしい記事

日本の病院が患者を待たせる意外な理由

2018/9/29の毎日新聞に下記のような記事が出ていました。

そもそも今回この問題が取り上げられたのは、

大学病院の眼科を受診して待たされた著名な作家が「天罰が下るよ」と怒った話が紹介され、ネットやツイッター上で大きな話題になりました。

とのこと。

上の記事の中でインタビューを受けている志賀隆先生は、救急の世界ではかなり著名な方で、アメリカで救急を勉強されてきた叩き上げの先生

詳しいプロフィールは下記を参照してください。

(新聞の記事に載るような医師も千差万別なので、どんな人がしゃべっているのかは確認する習慣をつけたほうが良いです。。)

それにしても病院の待ち時間って長いですよね。。

医師側としては、もちろん全く悪気はなく

医師
医師
待たせてしまって申し訳ないな・・

と思いながら、なんとかお待たせしないように汗をかいていることがほとんどです。

でも、現実には多くの診療科で予約していても待ち時間が長いことが多いと思います。

じゃあ何故病院の待ち時間はこんなに長いんでしょう??

現役医師が語る「病院の待ち時間が長い理由」

そもそも予約枠がタイト

まずこちらを見てください。

医師が自分の外来予約枠に予約を入れる時の画面です。

これは病院によって違うと思いますが、当院(いわゆる大病院に分類されます)では30分枠に3人がデフォルト設定

つまりあなたの予約枠が9:30-10:00だとすると、9:30ちょうどに呼ばれる場合と10:00に呼ばれる場合があります。

すでにこの時点で30分の待ち時間が発生していますね・・・。

「押す」理由は主に二つ

また、30分の枠に3人の予約があるということはつまり、そもそも一人当たりの診察時間は10分以上はかけられないということ。

逆にいうと、一人、20分の診察が患者さんがいた場合、どうしても10分ずつ遅れが生じます。基本的にはこれの繰り返しで、どんどん予約時間からずれていくことになります。

患者さん
患者さん
2時間も待ったのに、診察時間は5分だった!!(怒)

という不満は、こういうところの積み重ねから生じているんですよ。。。

ちなみに、最初から15分の枠に2-3人を予約枠としている病院もあるので、その場合はもっと大変なことになります・・・。

では予定より時間を要する患者さんの診察とはどういうケースでしょうか。

予定時間より診察に時間を要する患者さんが多い日


一つ目は「状態が悪くなっている患者さんがいる場合」です。

例えば、思っていたより血圧が上がっている、腎臓や肝臓の数値が悪くなっている、再発していないと思っていたガンが再発しているかもしれない所見がある、などですね。

この場合は追加検査や他の専門科に紹介する必要があるので、紹介状を書いたり検査を追加したり、本人に病状を説明したり(これが最も時間が必要なところです)とても10分で全てを終えるのは無理です。

てつろう
てつろう
これが原因で遅れているときは、他の患者さんにもご理解を得たいなとは思います・・。

検査結果が出るのが遅い場合(もしくは検査を受けるのが遅い場合)

もう一つは「来院予定時刻が遅れて検査が遅れ、診察も遅れる」というケース。

多くの内科の診療科の場合は、診察前に採血を取っていることが多いですよね?

一般に、診療所では当日結果が出ないことが多く、大きい病院なら当日60-90分で結果が出ることが多いと思います。

例えば上の図でいうと、10:30に診察予定の患者さんは9:30に採血を終わっていないと10:30に診察するのが難しくなります。

そうすると、10:30枠のはずが11:00枠で診察することになり、必然的にその後のスケジュールは遅れていくんですよね。。

新患・臨時受診枠は別ブースでないと待ち時間は必発

では、すべての予定患者さんがスムーズな経過で、かつ採血など検査結果が出るのもスムーズだった場合は待ち時間は30分以内なのか?

多くの場合はそうではないと思います。

その理由は「初診あるいは予約外受診」です。

初診の場合、医師が外来ですることは下記の通り。

1問診
2詳細な診察
3予測される病気を検索するための検査を実施(採血など)
4出た結果の解釈
5検査結果の説明と今後の方針の説明

少なくともこのようなステップを踏む必要があり、絶対に10分程度では終わりません
(逆に10分で終わらせたら問題です・・)

特に時間を要するのが4、5であることが多く、初めて会った患者さんほど(まだ信頼関係ができていないので)詳しく、丁寧に説明する必要があります。

医師
医師
血圧が高いようなので薬出しておきますね!

あるいは、

医師
医師
ちょっとだけ蛋白尿が出ていますが、大丈夫でしょう!

というような適当な説明では、納得できませんよね?

ある程度しっかりご自分の状態を把握してもらうには、それなりに時間をかけての説明が必要です。

多くの患者さんは、医学の知識はほとんどない方なので、きちんと順序立てて説明しなくてはなりません。


もともと30分で3人の予約枠がきっちり埋まっている状況だと、追加で予約外や初回の患者さんを診るのは相当に無理があるということですね・・・。

まとめ

病院の待ち時間って本当に長いです。

医師も頑張ってお待たせしないように頑張っているのですが、どうしても待ち時間が出てしまうことが多いのではないでしょうか。

予約時間に診察できないという大きな理由はここで書いたケースが多いのではと思いますが、やっぱりそもそもの予約がタイトなのが問題なんですよね。。

個人レベルの努力で改善する問題ではなく、うまいシステムの構築が必要なんじゃないかなぁと思っています。