病気・症状

ふらつき・倦怠感で入院した私の祖母の意外な病名【内服薬にご注意を!】

今年の夏に祖母が入院しました

私には今年88歳になる祖母がいます。

今の所元気で歩いたり生活するのには問題がないので、実家からほど近い家に一人暮らしをしています。

そんな祖母がこの夏ある病名で入院したので、今日はそのお話です。
結論から言うと、「自分の飲んでいる薬の作用・副作用は十分良く知っておきましょう」って内容です!

ふらつき・倦怠感で受診


一人暮らしということもあって、少し精神的に波のある私の祖母。

さすがに88歳ということもあって、よくしんどい、しんどいと言っているので周囲の親族はどのくらいしんどいのか、がイマイチ客観的には把握しづらいところがあります。

本人も「なんとなくしんどい」時と「本当にしんどい」時があるようで、でもその差はよくわからなったりするようです。

まあ無理もありません、ご高齢なので・・・

で、その夏の日も「しんどい」と言っていましたが、どうやら数日しっかり食事も取れていないようなので、息子さん(つまり私の叔父)が病院へ連れて行きました。

で、そのまま入院となりました。

低ナトリウム血症の診断で入院

「倦怠感・ふらつき」というと貧血をはじめとして、いろんな病気が鑑別になります。

今回の祖母の病名は「低ナトリウム血症」。

分類すると「電解質異常」ということになり、まさしく私の専門領域になります。。

「低ナトリウム」と言われても「はて?」って感じになると思いますので簡単に説明します。

人間に体は水分や塩分と、たんぱく質から構成されています。

塩分というのは、理科の授業で習ったことがあると思いますが「塩化ナトリウム」のこと。これを化学記号に直すとNaClとなります。

このNa(ナトリウム)とCl(クロール)というのがすなわち「電解質」。

人間の体は、採血すると血清ナトリウム濃度は140程度に維持されるように様々な仕組みが備わっています(これを詳しく説明すると医学生並みの知識が必要になるので割愛)

ざっくりいうと「体から出て行くナトリウムの量」と「体に入ってくるナトリウムの量」のバランスが崩れると、低ナトリウム血症になったり高ナトリウム血症になったりします。

そして、「低ナトリウム血症」になるとなんとなくしんどくなります。

今回祖母の入院時は血清ナトリウム濃度120前半だったので、かなりしんどかったと思いますね。。(これ以上の詳しい説明は下記のサイトを参照してください)

原因は薬剤性:SSRIによる低ナトリウム血症

ということで今回、私の祖母はナトリウムのIN-OUTのバランスが崩れて低ナトリウム血症になってしまいました。

じゃあ原因はなんだったのでしょう?

実は今回の主な原因は祖母が処方されていた抗うつ薬:SSRI(商品名:パキシル)だったと思われます。

(その理由は「不適切な尿中へのナトリウム排泄が亢進しており、薬剤中止によってそれが改善されたから」ですがちょっと専門的すぎるのでこの部分は読み飛ばしてください。。)

実は祖母、最初の方にも書きましたが「しんどい」や「さみしい」「やる気がでない」などの症状があるので、近くの心療内科へ通っていました

そこで少し前からパキシルを処方してもらっていたようです。

パキシルの添付文書にも副作用の欄に「低ナトリウム血症」は明記されているのですが、実際に現場にいると、これ結構遭遇します。。

 www.info.pmda.go.jp 

パキシル錠5mg/パキシル錠10mg/パキシル錠20mg
http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/1179041F1025_2_35/

パキシル自体は、それによって気持ちの問題が改善する患者さんも多いので良い薬だとは思いますが、どんな薬も副作用には注意が必要ということですね。

薬・特にポリファーマシーで入院する高齢者の増加

今回のお話で何が言いたかったかと言いますと、「自分が飲んでいる薬の作用・副作用についてはよくしておきましょう」ということです。

良かれと思って飲んでいるはずなのに、実は逆に自分の体に害を及ぼしているってケースは、今回の「低ナトリウム血症」に限らず結構あるんですよ!

例えば・・・

・骨粗鬆症の治療のためにビタミンD製剤を内服していたら、気づかないうちに「高カルシウム血症」になっている

・便秘のためにマグネシウム製剤を飲んでいたら、気づかないうちに「高マグネシウム血症」になっている

・体にいいかなと思って漢方を飲んでいたら「低カリウム血症」担っていた
(偽性アルドステロン症と言います。詳しくはこちらのページを参照)

などなど。

今回の祖母のケースは一つの薬の副作用で起こりましたが、たくさんお薬を飲んでいる方はそれだけ飲み合わせの問題が出て来やすくなります。これを俗に「ポリファーマシー」と言います。

処方する医師の側が「その薬は本当に必要な薬なのか」をよく考える必要は当然あります。

ただ、受け取る患者さんの側もある程度は「この薬はどういう作用があるのか」と疑問を持ち、調べてみる姿勢が必要な時代になっているんじゃないかなあと思います。

まとめ

歳をとるごとに何かと持病が出てくるのは、人間なので仕方のないこと。

でも、良かれと思って飲んでいるはずなのに、実は逆に自分の体に害を及ぼしているということもあるんですよ!

その薬は本当に自分に必要な薬なのか?
医師に勧められたから漠然と飲み続けている薬、ありませんか?

もちろん内服薬の指示は医師の責任のもと、行われますので最終的な責任は医師にあります

でも、「この薬はどういう作用があるのか」と疑問を持って調べる姿勢もまた、必要な時代だと思いますね。。